2012年6月20日水曜日

幻の新幹線に出合いたい点検専用車探しにファン走る。

乗客がいない。時刻表にも載っていない。そんな新幹線がいま、人気を呼んでいる。東北新幹線などの「East i(イーストアイ)」と、東海道・山陽新幹線の「ドクターイエロー」はともに線路や架線を点検するための専用車だ。運行ダイヤは公表されていない。いつ、どこで見られるのか。ファンの間では、目撃情報が瞬時のうちに駆けめぐり、模型の売れ行きも急増中だ。

平日午前のJR東京駅新幹線ホーム。白地に赤の車体の「イーストアイ」が到着すると、親子連れや会社員らがカメラや携帯電話で一斉に撮影を始めた。子どもたちから「かわいい」との声が飛ぶ。

山形新幹線「つばさ」などに使われているE3系を基に開発され、2002年にお目見えした。東北と上越、長野の新幹線区間では10日に1回、山形、秋田のミニ新幹線区間は年4回、全線を走って検査する。12月に開通する新青森(青森市)―八戸(青森県八戸市)の間でも、走行中の姿が沿線住民の人気を集めている。

6両編成の車内には、大型コンピューターが並べられ、軌道や電力などの計測員12人がモニターに目を光らせている。

JR東日本新幹線技術基準グループリーダーの桑原克也さん(47)は「イーストアイで見つけた線路や架線の異常を即座に直しているから、高速化する新幹線が快適な乗り心地を保てる」と語る。新幹線は開業以来、列車が原因の死亡事故はゼロだ。安全運行を支える「縁の下の力持ち」のような存在だ。

イーストアイの兄貴分が東海道・山陽新幹線(東京―博多)を10日に1回程度走る「ドクターイエロー」。JR東の営業区間でもイーストの登場以前は、ドクターイエローが走っていた。

ドクターイエローの初代は、新幹線開業2年前の1962年に誕生した。団子鼻の初代0系新幹線がベースの車体で、架線などの電気設備だけを点検できた。74年に架線と線路の両方の点検ができる2代目が登場。95年1月の阪神大震災の際、復旧工事を終えた区間を真っ先に走り、営業再開へ向けた最終的な点検をした。