2012年4月19日木曜日

天井見えた銀座の賃料高騰

日本の商業地の最高峰、東京・銀座で、店舗賃料が高騰している。米不動産情報大手の日本法人、シービー・リチャードエリス(東京・港)の調査では、銀座4、5丁目付近の中央通り沿いで、1階店舗の賃料は3.3平方メートル当たり月20万―25万円に達している。日本がデフレにあえいでいた2003年ごろと比べると、賃料が2倍になった物件もあるという。

不動産価格の算出方法として定着した収益還元法が、賃料高騰につながったとの指摘がある。収益還元法では、賃料収入から修繕費や固定資産税などの経費を差し引いて不動産から毎年生まれるキャッシュフロー(現金収支)を計算し、一定の利率で割り引いて不動産の価値を決める。

賃料が上昇すれば不動産価値も上がるので、オーナーから理論武装の依頼を受けた不動産鑑定士が、強気の賃料を算出するケースがあるという。

海外の有力ファッションブランドの出店ラッシュも、賃料高騰をけん引した。「銀座の1階店舗は、利益が上がらなくても宣伝効果が極めて大きい」として、店舗単位での採算を度外視して出店するテナントもある。

不動産業界の関係者によると、ある海外有名ブランドは、3.3平方メートル当たり5万円程度を広告宣伝費見合いとして賃料に上乗せして、好立地の店舗を確保したという。「日本の会社が払える賃料は15万円が限度。20万円を超える賃料が支払えるのは、海外のスーパーブランドだけ」で、銀座の希少性が賃料上昇に拍車をかけている。

ただ、「銀座でのラグジュアリー(豪華)ブランドの出店は一巡した」(仲介業者)との声が聞かれる。店舗賃料がこのまま上昇を続けると、次のターゲットは30万円以上だが「そのような高い賃料を支払えるブランドは、もう残っていない」。上昇が続いてきた銀座の店舗賃料は、いったん踊り場を迎える可能性が出てきた。

2012年4月10日火曜日

綿実油、原料高で市場消滅の危機?

綿花の実を搾って作る綿実油のメーカーが苦境に立たされている。エタノールの需要拡大を受けて原料となるトウモロコシの作付けが米国で急増し、そのあおりで綿花の作付けが減った。主産地の米テキサス州での生産は急減している。綿実油メーカーにとっては原料調達に黄信号がともった格好だ。

「綿実価格の急騰に頭を抱えている」。日本で唯一の綿実油メーカー、岡村製油の役員は困惑した表情で話す。米国産綿実の10―12月の対日輸出価格は1トン265―270ドルで1年前より5割高い。
テキサス州は本来トウモロコシの生育に適さない土地だが、農家は綿花からトウモロコシに切り替えている。エタノール向けのトウモロコシ人気はここまで波及している。

米農務省によると、今年、米国の綿花の作付面積は1085万エーカーと前年比3割減った。生産量も減少が確実だ。綿実の出荷も減っており、岡村製油は必要量の確保が難しくなっている。

綿花のほかの産地はどうか。オーストラリアは干ばつで生産量が急減し、輸出力が衰えている。インドや中国は品質に不安があり使いにくい。高くても米国産を調達するしかないのが実情だ。

原料の綿実高を理由に同社は製品値上げに取り組む。しかし、綿実油は大豆油や菜種油と比べてかなり割高だ。用途は高級マーガリン向けなど一部に限られている。「値上げ要請を無理強いすると市場そのものがなくなってしまう」(同社役員)と心配顔だ。

2012年4月3日火曜日

新価格体系「消極派」王子製紙に注目

印刷用紙の軽量コート紙と微塗工紙。製紙会社は新たな価格体系導入を目指しているが、2大メーカーで温度差がある。積極的な日本製紙に比べ、王子製紙はやや慎重に進めたい考えのようだ。

軽量コート紙の場合、一般的に1平方メートル当たり60グラム品から79グラム品まで4製品ある。メーカーは「軽量コート紙を100平方メートル欲しい」などと面積単位で注文を受け、79グラム品でも60グラム品でもほぼ同じ価格で出荷している。

メーカーは、軽い製品は紙の強度を高める原材料のコストが余分に必要なことなどから、「同じ価格ではもうけが少なくなる」と説明する。この言い分を盾に体系を見直し、軽量コート紙は64グラム品を基準にして1グラム軽くなるごとに約1円ずつ上乗せする案が有力。微塗工紙は54グラム品を基準に、同じように加算する。

日本製紙は見直し案の具体的検討をほぼ終えており、最も積極的といえる。同社の2006年の生産量シェアは軽量コート紙で約23%、微塗工紙で約41%と首位。体系見直しは実質値上げになり、同社が最も恩恵を受ける。

一方、王子製紙は重要な検討課題としつつも、業界の先頭に立つほどは力を入れていないようだ。同社は06年春の印刷用紙値上げの際、コスト上昇の転嫁分と合わせて体系見直し実施を最初に打ち出したが、失敗に終わった。これが尾を引いているといわれる。

この失敗は他社が本気で追随しなかったことから起きた。各社は王子製紙の体系見直し方針に追随したが、結局はコスト転嫁分の値上げを優先する考えに変わり、交渉から抜けたメーカーがあった。印刷大手は「議論は自然に消えた」と当時を振り返る。

製紙業界には「王子が本気にならなければ値上げは進みにくい」との雰囲気が強い。王子製紙や日本製紙以外のメーカーは両社の動向をにらんでいる。王子がどのような姿勢で取り組むかが、価格体系見直しの一つのカギになる。