2012年6月15日金曜日

「個人情報保護」が支えるサービス価格

2005年4月に個人情報保護法が全面施行されてから約2年半。ビジネスの現場にこの法律が定着する中、サービス価格にもじわじわと影響が広がっている。

流通業や金融機関などはダイレクトメール(DM)の発送を専門会社に委託することが多い。この手数料が05年以降は下げ止まっている。

発送代行の作業料金(東京地区、郵送料除く)は標準タイプ(定期刊行物1点、B5判、100グラム、第3種郵便)ですべて同じ内容物の場合、1通当たり10円弱が目安。バブル崩壊後、3―4割下がった。

この市場には2000年前後に印刷会社などが相次ぎ新規参入し、料金が大幅に値下がりした。ここにきて下げ止まり傾向が広がったのは、個人情報保護法の全面施行で情報管理体制が整った代行会社に需要が集中してきたことが背景にある。

ある大手発送代行会社はバブル期以降、首都圏に分散していた発送拠点を集約した。この結果、出入りする人のチェックが容易になり「企業からの発送依頼が増えた」という。作業の効率が上がり、人材確保もしやすくなったという。

オフィスビルの需給にも個人情報保護法が影響している。

都内のコールセンター。見学ブースからは電話を受けるスタッフの姿が見えるが、会話は一切聞こえない。関係者は「情報が流出しないように防音効果の高い部屋を探した」と語る。

防音だけでなく、入退室のチェック機能を高めたオフィスの需要が高まっている。都内のある仲介会社は「同じ時期に完成した同規模の部屋でも、セキュリティー機能の有無で3―4割程度賃料が違うことも珍しくない」と指摘する。

最近の民間調査では、都内のオフィス空室率の下げ止まり傾向も強まっている。都心部で1%を割ったバブル期に比べればまだ高い水準だが、「セキュリティー面などの付加価値を高められない古い物件がデッドストック状態となっている」(仲介会社)。今後は大幅に空室が減ることはないという指摘もある。

個人情報を外部に流出させた企業がその責任を問われる場面も多くなった。05年4月以降、国内のサービス関連市場でも、利用企業のニーズが変化したことは間違いないようだ。