2014年7月22日火曜日

有効需要政策の限界

一九二七年の金融恐慌後も井上準之助蔵相によって、当時のグローバルスタンダードである金本位制復帰が追求され、一九三〇年に金解禁に踏み切った。と同時に昭和恐慌に突入していった。そして高橋是清による巨額の財政出動が実施されてゆく。いずれも今日とられている政策とほぼ同一である。そして最近浮上してきた国債の日銀引受けも高橋是清か始めたものである。我々は昭和恐慌の後追いをしていることになる。

眼を外に転ずれば、当時もイギリスのポンドを中心とする国際通貨体制が揺らぎ、日本の金融恐慌を皮切りにバブルが破綻して、その直後からアメリカの株価の急上昇が生じた。そして一九二九年一〇月末に、最後に残ったアメリカのバブルが弾けて大恐慌に突入していったのである。その間、世界的デフレが進んでいたのも今日と同じである。

「狼が来た」の類の議論は避けねばならないが、歴史の転換点という認識は不可欠であろう。そして歴史の教訓に学ぶならば、無防備なグローバルスタンダード論や単純な二分法的思考からデフレ効果の大きい「小さな政府」や規制緩和路線だけを追求していても、脱出口は見えてこないどころか、泥沼へと足を踏み入れてゆく危険性をはらんでいる。

他方で、ケインズ政策は効果を発揮しているだろうか。一九九七年以降、日本経済は連続してマイナス成長を続けている。こうした事態に対して、九八年度は二八兆円を超える大規模な景気対策が打たれたが、その効果は現われず、そのまま行けば三年連続のマイナス成長となる危険性が高まったため、さらに政府は九八年一月ニ八日に約二四兆円にのぼる緊急経済対策を発表した。しかし九九年以降も、失業率の悪化が続いている。明らかにケインジアンの有効需要政策も限界に達している。

この間、日銀が貸し渋りにあっている企業のCP(コマーシャル・ペーパ土を引き受けたり、開銀を通じた社債の引受け、信用保証協会を通じた融資枠の拡大、あるいは商工会議所の仲介を通じた財政投融資の中小企業融資機関(国民金融公庫・中小企業金融公庫など)による無担保融資など、節度を失いつつある金融政策、つまり変形された調整インフレ政策によって、かろうじて日本経済の底割れを防いでいる。事実上、これらは民間金融部門の不良債権を公的部門に移し替えているだけであり、将来にツケを貯め込む危険な政策といってよいだろう。

2014年7月8日火曜日

外国為替管理法の改正

ここに目をつけたのがNTTデータである。同社は一九八一年から自動照会通知システム「ANSER」のサービスを開始して以来、ネットワークの拡充に取り組んできた。ANSER-WEBはインターネット経由でANSERサービスを提供するもので、九六年から始めた。利用者はネットスケープーナビゲーターなどのブラウザーソフトを起動して、指定されたホームページにアクセスすればいい。接続しやすいことが特長で、残高照会、入出金明細照会、資金移動サービスなどが簡単にできる。

このサービス機能を一段と高めたのがANSER-SPCである。同社はこれを次世代のホームーバンキングーシステムと位置付けて、一九九七年から提供を開始した。ANSERISPCぱ安全性と信頼性をより重視しているためにNTTデータが管理している専用線を利用したネットワーク方式をとっているが、これに対応する家計簿ソフトを使って残高照会、入出金明細照会、振込、振替などのホームーバンキング取引ができる。マイクロソフト社が九八年七月にウィンドウズ98を発売したが、このときに同時発売した「マイクロソフト・マネー」の日本語版をANSER-SPC対応にした。そこで東京三菱銀行は、マイクロソフトーマネーの基本機能に独自機能を加えたカスタマイズ版を通信販売で個人顧客に提供することにした。

ATMが普及した現在、個人顧客が銀行に足を運ぶ目的の大半ばATMを利用するためだといっていい。しかし、いまやそのために、わざわざ銀行まで出掛けなくても、家にいながらにして、しかも好きな時間にATMのサービスを受けることができる。それどころか、金利や外為取引の案内、年金やローンの相談、融資受付などATM以上のサービスが可能なのだ。いまやパソコンが、銀行の窓口にとって代わったのである。NTTデータは、エレクトロニックーバンキングの将来をも視野に入れて「3M政策」を掲げている。

外国為替管理法が一九九八年四月に改正された結果、お金には国境がなくなった。企業会計の分野では従来の日本独自の企業会計原則はもはや通用せず、多通貨会計、時価主義会計、連結決算主義会計という国際的にも通用する方式に否応なく転換していかざるを得ない。ANSERには、多通貨に対応した自動仕分け、自動時価評価、外貨取り扱い基準の統一による自動連結処理などを実現するための対策が盛り込まれている。