2015年3月12日木曜日

ウイルスという病原体

そのほかの病原体として、カビと同じく真核生物である原虫というものがある。原虫は単細胞の動物と考えられている。アメーバ赤痢という病気を起こすものがある。またマラリアを起こす原虫は、現在の感染医学の中で最も重要な病原体のひとつである。マラリア原虫は、寄生虫学あるいは熱帯医学の体系の中で研究されている。

ウイルスは病原体の中でも特別な扱いを受けている。形態上の単位がほかの病原体のように細胞ではないことや、これと関係することだが、大きさが非常に小さいことなどからである。また、生きている宿主細胞の存在なしでは存続できないので、多くの場合、病気との関連ぬきには考えられないことも特徴的である。ウイルスはいつでもわれわれの細胞の中に入り込んでいたり、入り込もうとしているので、はっきりした証拠がなくても、大なり小なり細胞に大きな影響を及ぼしていると考えられる。

ファージと同様に、ウイルスにもそれぞれの宿主種が存在する。さらに、その宿主種のなかの特定の細胞に感染するのが原則である。ウイルスの宿主は、ファージとちかって有限の寿命をもった動物や植物であるが、ウイルスも宿主細胞の中で粒子を作り、宿主細胞が崩壊してしまう場合と、宿主細胞に潜伏を続けたままで存在する場合がある。普通、問題となるウイルス病は前者のかたちを取るが、後者のかたちのものにも重要な病気がいくつかある。

いずれにしてもウイルスは、宿主細胞と運命を共にしないでウイルス粒子として細胞外へ飛び出す必要もあると考えられると同時に、宿主細胞の寿命にあわせて、できる限り共存するという性質も備えていると考えられる。要するにどのようなウイルスでも、それぞれ宿主細胞中に共存状態で存在する相と、ウイルス粒子になる相とが互いに助け合って感染環を作り、種の維持保存が行なわれているのだろう。