2014年12月12日金曜日

周辺住民も気軽にサービスエリアを利用できる

舞鶴若狭自動車道・西紀サービスエリア支配人の荻野順子さんは、天井のエアコンの吹き出し口の汚れを指摘された。「今まではライバルがいなくて、営業的にものんびりしていた。今は点数や順位が付けられるので、とても剌激になります」と話している。荻野さんは指摘された部分の改善だけでなく、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」というような声かけトレーニングを店員に行うようになった。公団時代の体質を変えなければ生き残れないことが、現場にも浸透してきている。

ハイウェイーコンビニの秘策とは関西から九州・沖縄まで、総延長三二〇〇キロに及ぶ西日本高速道路の受け持ち区間には、通行量の少ない赤字路線が数多くある。その少ない利用客を上手に取り込むために、新規テナントの開発が進んでいた。例えば、九州自動車道の佐賀・基山パーキングエリア。ここには、ハイウェイピットと名付けられたハイウェイーコンビニがある。運営はローソンが行っている。二四時間体制なのはもちろんのこと、薬剤師を常駐させて眠気覚ましや酔い止め、目薬など自動車に乗る人たちを意識したドラッグコーナーが設けられていた。奥には、マッサージーチェアまである。このハイウェイーコンビニの最大の特徴は、店内にゆったりとしたカフェコーナーがあること。ここで、お客は買ったばかりの弁当などを食べられるのだ。

ハイウェイ・コンビニを開発したのは、西日本高速道路サービスHDの石崎直喜さん(三七歳)だ。民営化以前は、高速道路施設の設計を手掛けていたが、今やごこスターコンビニと呼ばれている。「市中のコンビニにはない飲食形態を持った店作りで、お客を増やしていきたい」と語っている。石崎さんは、徳島自動車道の徳島・吉野川サービスエリアに新しいハイウェイーコンビニを開こうと計画していた。公団時代にいわゆるファミリー企業が運営していたテナントは全部取り止め、ハイウェイ・コンビニを作ろうというのである。もちろん、カフェコーナーを併設した二四時間営業の店だ。「ここは面積的にも、通常のコンビニの倍近い広さがとれます。お客さまに満足して頂ける品揃えができると思います」と自信を見せた。

ところが、この吉野川サービスエリアには、すぐ近くに強力なライバルが立ちはだかっていた。吉野川ハイウェイオアシスである。隣接する土地に建設されたこの施設には、巨大なお土産物コーナーが設置されている。高知、愛媛、徳島、香川と四国四県の名産品二五〇〇アイテムが、所狭しと並べられていた。ここの責任者である吉野川ハイウェイオアシスの真鍋勝明さんは「競合するジュースやおにぎり、弁当はコンビニの方が強いでしょうが、それは微々たるもの。うちは、お土産が専門ですから」と、動じる様子はなかった。

それに対して、石崎さんは、不敵な笑みを浮かべた。「がっぷり四つで戦いますよ。うちは普通のコンビニじやないですから。反則みたいなコンビニなんで」石崎さんは吉野川サービスエリアのコンビニに、店舗の四分の一の面積を割いて、お土産を置くことにしたのである。厳選した品揃えの土産品で、吉野川ハイウェイオアシスに挑もうというのだ。さらに、石崎さんには秘策があった。吉野川サービスエリアは、一日片側三〇〇〇台しか通行量がない厳しい路線にある。しかし、その裏側には、広大な住宅地が広がっていた。人口一万六〇〇〇人の東みよし町の住民を、ハイウェイーコンビニに取り込もうと考えたのだ。これが可能なのも、民営化による規制緩和で、周辺住民も気軽にサービスエリアを利用できることになったためである。