2015年1月15日木曜日

ソフト面の売り込みが課題

ただ残念ながら、「現在の日本にチャンスが転がっている」と、状況に敏感な企業は、米国のGEやIBMだったりする。日本企業ではないのだ。彼らは非常に感度が高いので、東北の復興特区にコミットしてきている。GEは東北医療特区に関心を示しているし、IBMは東北のエネルギーにすごくコミットしている。日本企業はもっと行動を起こさなくてはならない。そして本当は最も真剣に攻めに転ずるべきは、電力会社そのものである。最もスマートな系統管理技術を持っているなら、それは世界中で売り物になる。省エネ技術もしかり。NTTのいまの企業価値、時価総額の大半は、伝統的な「もしもし固定電話」によるものではない。自由化分野でNTTなりに真剣勝負をして携帯電話のドコモの時価総額であり、インターネットサービス関連の収益である。

電力会社の人々も、いまは突然の大災害による原発停止問題と、急に吹き出した自由化の強烈な向かい風に、ひたすら当惑していることだろう。しかし起こってしまったことを、いまさらあれこれ言ってみてもしょうがない。そんなことより未来だ。いまこそ新しい世界に打って出るべく大改革、大ビジネスイノベーションに乗り出すべきときなのだ。そしてNTTドコモが一瞬手にしかけて実現できなかった夢、世界制覇の夢を、電力分野で日本のプレイヤーの誰か、新しい世代の誰かが、将来、実現しようではないか。日本の強みといえば、アニメーションやマンガなどのコンテンツを思い浮かべる人もいるかもしれない。だが、アニメやマンガだけではさすがに一国の経済は支えられない。市場規模が小さすぎるのだ。

通信やITはメジャーインダストリー、巨大産業だ。そして先に述べたような、これから日本が本格的に取り組んでいく医療・介護にしろ、エネルギーにしろ、万人が関わっていく、裾野が広い巨大産業だ。エネルギーは経済の基幹産業だし、国民の五人に一人が六五歳以上という超高齢社会の日本では、医療・介護も間違いなく巨大産業となっていく。もともと一国の経済を支えられる規模の産業は、それほど種類は多くない。自動車やエレクトロニクスはその力を持っているが、いま、そのあたりの産業に元気がない。だからこそ、この二大フィールドで日本は成長しなければならない。技術や機械などを売るのもそうだが、システムやノウハウなどのソフトをパッケージ化して、あとに続く国に売り込む。それが日本の生きる道だ。

これまで、ハードのつくり込みは得意でも、ソフトの売り込みは日本人の得意とするところではなかった。またハードでも、個別製品の品質には自信があっても、地域の特性に合わせたローカライズは苦手。インフラも、つくってしまったらそれでおしまいで、その後の運用は現地まかせ。だが、これからはそうも言っていられない。ここで発想の転換が必要だ。日本人が苦手なら、外国人に日本企業に入ってもらって、彼らにまかせればいい。企業活動がグローバル化しているのだから、いつまでも日本人だけで経営やビジネスをやろうとするのが間違っているのである。

三〇年ほど前までは、米国企業のGEやIBMでは、取締役会のメンバーは白人男性ばかりだった。しかし、現時点でのメンバーを見れば、違いは一目瞭然だ。人種も性別もバラバラで、IBMの新しいCEOはついに女性になった。グワーバル企業というのは本来、そういうものなのだ。かつては、米国企業でも幹部クラスは白人男性社会だった。米国には、国内に巨大市場があるから、それで十分通用した。ところが、グローバルにビジネスを展開している企業にとっては、米国内市場の比率は年々下がっていった。すると、企業内部も国際化していかないと対応できない。その結果、現在のグローバル企業では多種多様な人材が共存するようになった。