2012年6月13日水曜日

コメ市場揺るがす「7000円問題」

全国農業協同組合連合会(全農)が2007年産米からコメ農家への買い付け代金の支払い方式を見直す。このことを巡り、産地が揺れている。

これまで全農は農家からコメを集荷する段階で販売予想価格を支払う「仮渡し金」方式を取っていた。これを今年の新米から、内金をまず払い、後に実際の販売額を見ながら追加額を支払う「概算金」方式に変える。この内金の基準価格が60キロ当たり7000円と決まった。このことから概算金方式の導入は「7000円問題」と呼ばれ、各地のJAや生産者から不安の声が上がっている。「コメ価格が7000円まで下がってしまうのではないか」というのだ。

仮渡し金方式の場合、全農は予想した販売価格を集荷時に農家に支払う。予想価格よりも安く売れた場合は支払った仮渡し金の中から回収するのが本来の趣旨だが、実際には難しい。このため市場では、仮渡し金の価格が全農の販売価格の実質的な下限と見なされてきた。

例えば06年産の場合、北海道産米の仮渡し金は60キロ1万円(現在の相対取引価格は約1万3400円)、新潟産コシヒカリは1万5000円(同約1万7600円)だったとされている。

概算金方式ではこれが取りあえず7000円になる。農家にしてみれば、一時的な手取り収入が場合によっては半減する。後は市場での人気次第だ。仮に1万3000円で売れなくても、全農側には6000円の値下げ余地がある計算だ。この場合、当然ながら農家への追加払いはない。

実際は7000円に全農の経費2000―3000円と流通経費が加算され、「市場で取引されるコメ価格は1万2000円程度が下限だろう」(大手卸業者)という。しかし、従来に比べ農家の経営が市場環境に大きく影響を受けることは確実だ。

例えば06年産米で今も在庫があるのは人気が高いとされてきたコシヒカリ。全国で一斉に作られるようになり、供給過剰となったためだ。各地のコシヒカリはブランド米として比較的高値で取引されてきた。しかし07年産米からは、余るようなら全農はより大胆に値引きして売ってしまう可能性が高い。産地にも、今後は消費者が求めているコメを今以上に丁寧に見極めていく努力が求められているようだ。