2012年5月16日水曜日

好調な中古車輸出、鉄スクラップ高の一因?

世界的に鉄スクラップ価格が上昇している。最大の要因は世界的な鉄の生産拡大による、鉄鉱石や鉄スクラップといった原料の不足だ。しかし日本での値上がりについては、日本車人気が一役買っているとの見方も浮上している。

鉄スクラップ価格は東京市場で10月上旬、1トン当たり3万9000―4万円(指標品、電炉買値)で、1年前より4割強高く、5年前に比べると約3倍になっている。米国内の指標価格も高水準で、今月初めに1トン約266ドルとなり1年前より3割強高い。

鉄スクラップは工場での鉄板の切りくずや、建築物の解体に伴う廃棄鋼材、家電製品や自動車のリサイクルなどで出てくるのが一般的。スクラップ業者はこれを買い集めて、電炉や高炉に販売したり、輸出したりしている。ただ最近はスクラップの発生量自体が少なめになっている。

理由は様々に考えられる。工場のコスト意識が高まり、スクラップの発生を減らしていることなどが指摘されている。ただ業者の中には「日本国内で廃車になる自動車が減っているのではないか」(商社)との見方も出ている。

まず国内の新車販売が振るわない。これは同じ自動車に長く乗り続け、買い替えを先延ばしする人が増えていることにつながる。そうすると、廃車になる中古車が減り、スクラップ発生量の減少につながる、という図式だ。

さらに日本の中古車は海外で人気が高い。ある中古車業者は「トヨタのRAV4など、四輪駆動の大きめの日本車は海外でも高値で販売されており、輸出に回る例もある」と語る。貿易統計で見ると、中古車輸出は今年4月から8月まで10万台前後で好調を維持している。

輸出先で伸びが目立つのはロシアや中東の産油国。ロシアは日本や米国と並ぶ、鉄スクラップの輸出大国の一つだが、最近は内需に振り向けるため鉄スクラップ輸出が減っているという。中古車輸出の増加は日本車人気の高さを示しており、それ自体は喜ばしいことだろう。

ただ回り回って国内の鉄スクラップ需給の引き締まりにつながり、その結果鋼材価格の上昇につながるとしたら痛しかゆしだ。