2012年5月21日月曜日

原油、近づく強気相場の終焉

原油相場の騰勢が衰えない。なかでもニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近相場は8月1日に過去最高値を更新し、9月12日に1バレル80ドルを超えた。3月から7月までロンドン市場の北海ブレントを下回っていたのがうそかのような「暴走」ぶりだ。

市場ではにわかに先高予測が台頭している。米ゴールドマン・サックスは供給リスクが顕在化すれば年末までにWTIは90ドルに達し、来年は平均85ドルで推移するとの超強気予測を示した。だが現在の高原相場は持続可能なのか。カギは米国の需要と景気だ。

米国では人口増と所得増で自動車保有台数が増えており、原油価格が高騰してもガソリン需要が伸びてきた。投資マネーが株や債券から原油などの商品に流れ込んでいる背景には、実需の堅調さがある。

それでも米景気が失速すれば、原油需要には間接的に下押し圧力が働く。ばんせい証券の武田真市場調査室長は「米ガソリン消費は小売価格が一時期より下がったにもかかわらず伸びが鈍化しており、個人消費が鈍っている可能性がある」とみる。米住宅ローン問題の影響が個人消費に波及すれば、市場で軽視されている需要減退リスクが注目されるだろう。

原油市場への資金流入を加速させたドル安も、本質的には米景気に対する不安の表れといえる。米金融当局の利下げは一時的に株価を押し上げても、長期的には原油高という副作用を伴って景気下押しリスクにつながりかねない。80ドル近辺の原油高が経済に与える影響は無視できず、長続きは難しいように思える。