2012年4月10日火曜日

綿実油、原料高で市場消滅の危機?

綿花の実を搾って作る綿実油のメーカーが苦境に立たされている。エタノールの需要拡大を受けて原料となるトウモロコシの作付けが米国で急増し、そのあおりで綿花の作付けが減った。主産地の米テキサス州での生産は急減している。綿実油メーカーにとっては原料調達に黄信号がともった格好だ。

「綿実価格の急騰に頭を抱えている」。日本で唯一の綿実油メーカー、岡村製油の役員は困惑した表情で話す。米国産綿実の10―12月の対日輸出価格は1トン265―270ドルで1年前より5割高い。
テキサス州は本来トウモロコシの生育に適さない土地だが、農家は綿花からトウモロコシに切り替えている。エタノール向けのトウモロコシ人気はここまで波及している。

米農務省によると、今年、米国の綿花の作付面積は1085万エーカーと前年比3割減った。生産量も減少が確実だ。綿実の出荷も減っており、岡村製油は必要量の確保が難しくなっている。

綿花のほかの産地はどうか。オーストラリアは干ばつで生産量が急減し、輸出力が衰えている。インドや中国は品質に不安があり使いにくい。高くても米国産を調達するしかないのが実情だ。

原料の綿実高を理由に同社は製品値上げに取り組む。しかし、綿実油は大豆油や菜種油と比べてかなり割高だ。用途は高級マーガリン向けなど一部に限られている。「値上げ要請を無理強いすると市場そのものがなくなってしまう」(同社役員)と心配顔だ。