2012年4月3日火曜日

新価格体系「消極派」王子製紙に注目

印刷用紙の軽量コート紙と微塗工紙。製紙会社は新たな価格体系導入を目指しているが、2大メーカーで温度差がある。積極的な日本製紙に比べ、王子製紙はやや慎重に進めたい考えのようだ。

軽量コート紙の場合、一般的に1平方メートル当たり60グラム品から79グラム品まで4製品ある。メーカーは「軽量コート紙を100平方メートル欲しい」などと面積単位で注文を受け、79グラム品でも60グラム品でもほぼ同じ価格で出荷している。

メーカーは、軽い製品は紙の強度を高める原材料のコストが余分に必要なことなどから、「同じ価格ではもうけが少なくなる」と説明する。この言い分を盾に体系を見直し、軽量コート紙は64グラム品を基準にして1グラム軽くなるごとに約1円ずつ上乗せする案が有力。微塗工紙は54グラム品を基準に、同じように加算する。

日本製紙は見直し案の具体的検討をほぼ終えており、最も積極的といえる。同社の2006年の生産量シェアは軽量コート紙で約23%、微塗工紙で約41%と首位。体系見直しは実質値上げになり、同社が最も恩恵を受ける。

一方、王子製紙は重要な検討課題としつつも、業界の先頭に立つほどは力を入れていないようだ。同社は06年春の印刷用紙値上げの際、コスト上昇の転嫁分と合わせて体系見直し実施を最初に打ち出したが、失敗に終わった。これが尾を引いているといわれる。

この失敗は他社が本気で追随しなかったことから起きた。各社は王子製紙の体系見直し方針に追随したが、結局はコスト転嫁分の値上げを優先する考えに変わり、交渉から抜けたメーカーがあった。印刷大手は「議論は自然に消えた」と当時を振り返る。

製紙業界には「王子が本気にならなければ値上げは進みにくい」との雰囲気が強い。王子製紙や日本製紙以外のメーカーは両社の動向をにらんでいる。王子がどのような姿勢で取り組むかが、価格体系見直しの一つのカギになる。