2014年5月2日金曜日

経済社会の掃除屋としての役割

このような買収・合併の手口のほとんどはいわゆる非友好的M&Aのケースである。ムラ社会的考え方で乗っ取り屋を社会的に蔑視したり、会社は経営者と中間経営者と従業員のモノと見る傾向の強い日本では、非友好的買収・合併とはそのほとんどのケースが経営失敗のあげく被合併会社側全員泣く泣く悲運を甘受するという事例がむしろ一般的である。

経営体は一箇の社会的資産と考え、所有・経営が分割され、会社帰属心に乏しい従業員や中間経営者層を多く抱える欧米型企業では、M&Aはむしろ資本・人・経営資源の効率化の推進を社会的に保障するシステム、あるいはムレから脱落する弱者の社会的自然淘汰と考える傾向がある。

コーポレイト・トレーダーはむしろ経済社会の「掃除屋」であり、ハイエナやハゲタカ的な積極的役割をもつとの肯定的考え方もありうる。それゆえ彼らへの資金供給が何か反社会的・非倫理的な金融機関行動とは考えないという風潮もあるであろう。

その意味で、世界的合併・買収案件に必ず顔を出すのはロンドンのマーチャント・バンカーたちや一連の著名なニューヨークのインベストメント・バンカー各社である。

つまり、顧客の極秘の内情やニーズにあらかじめ精通し、株式・債券・為替・技術・経営方針・製品・経歴・社会的地位等について該博な経験と知識を擁していて、そこで初めて可能なフィー・ビジネスがM&Aである。

日本でいえば旧財閥系の本社の関連企業総括部あたりの機能であるのであろう。八六年中、米某証券の推定によれば、米国の主要合併・買収三、九〇〇件、三、七三八億ドルに比して、日本のM&Aは二二三億ドル(三・三兆円)の規模とみられている。

会社・顧客自体の売買とは、もしそれが金融業者のイニシアティブで始まる案件であれば、まさに金融業者が真にフィナンシェール、または本来のバンカーとしての行為であり、純粋な意味でのコーポレイト・ファイナンシング・プランナーの精髄であろう。